次女が中学生になったばかりのころ。童話館のコースで「獣の奏者 Ⅰ闘蛇編」が届きました。上橋菜穂子さんの名作、獣の奏者シリーズの第1巻です。
夢中になって読み終わった次女。そして一言「ママ、誕生日プレゼント、このつづきがいい」と言いました。
本編4冊、外伝1冊、計5冊を買ってあげたのは、昨年の今ごろ。
次女が一心不乱に読んでいる姿を見た長女が「獣の奏者?獣の奏者エリン!?」
次女:「エリン、って主人公の名前だよ」
長女:「やっぱそうじゃん!これ昔アニメで見てた。すっごいよかった!!」
そう言えば、そうだ。主人と長女が、一生懸命見ていたアニメのタイトルをふと思い出しました。
この記事でお伝えしたいこと
獣の奏者シリーズとは?登場人物やあらすじをざっくりと
上橋菜穂子さんの代表作の一つ「獣の奏者」。リョザ神王国という国に生まれたエリンが主人公の物語です。
闘陀という闘うために作られた獣のための獣ノ医師であった母。その死により、今までの幸せな日々を奪われたエリン。
ジョウンという老人に拾われ、蜂飼いの仕事をしながら生命というものに真剣に向き合っていくうちに、いつか獣ノ医師になりたいという夢を抱き始めます。
その夢をかなえるべく入ったカザルム学舎に入学、そこで出会った傷ついた幼い王獣リランとの出会いが運命を変えてしまいます。
本来慣らしてはならないという掟のものに育てられていた王獣と、心を通わせる術を見出してしまったのです。
いつしか、リョザ神王国という国の命運がその肩に重くのしかかり、争いの中に巻き込まれていきます。
獣の奏者に夢中になった中学生の次女
シリーズは、1の闘蛇編、2の王獣編、3の探求編、4の完結編、そして外伝刹那の全5巻。
次女は表紙が美しい講談社文庫版でそろえました。
特に好きな表紙は「外伝 刹那」なのだそうです。
本当に夢中でして。早く寝たら?といっても、返事もないほど(笑)
学校の朝読書の時間もずっと読み続けていたようです。何回も、何回も読み返してました。
そして、「ママ、これ絶対読んで。」と猛プッシュ。
あまりにすすめるので、そんなにいいの?それじゃあ読むか…。
と手に取り、まあ、これも子育ての一環よね。同じ本を読んで思いを共有するというのもいいかも。
そして読み始めたんです。若干しぶしぶ気味でしたが…。
獣の奏者を読み終えての感想
この5冊。読み終えました。
泣いた。
お母さんが死を受け入れて闘陀の池に落とされた時。
そして、なんとか母を助けようと飛び込んだエリン。
禁を犯してまで、エリンの命を救った母の想い。。号泣です。
ネタバレになっちゃうのであまりかけないのですが、最後の戦い前のイアルとの最後の時間が切なすぎて。
最後、ジェシの想いを知り、「ありがとう」と言って、取って返すエリンの姿も。
行かないで、って、ホントに思った。泣きっぱなし…。
感動した。生きるって、生きるって…
素晴らしい(TT)←一言で言うと、これ。
エリンは、王獣の命も闘蛇の命も、小さな獣、虫、ひとりの兵士、家族、友人、すべての命に向き合い、いつくしむ思いが強い女性だと思う。
特殊な能力を身に付けたがために、戦いの中に身を投じてしまい、愛する家族とは二度と会えない旅に出なければならなかった。
それはすごく悲しいことだけれど、エリンによって奪われた命も、すくわれた命もすべてがいとおしいというか。
後に残った家族の強さも心に残る。
この、獣の奏者はとにかく「生きる」ために何をなすべきかを問いつづけた物語だったように思います。
一人の力は小さく、そして、思いとは裏腹な方向に進まざるを得ないこともあります。
それでも、愛するものを守るためにどう生きるべきか、常にエリンが自分に問いかけ、それを一緒に考えていたようなそんな気持ち。
うまく言えませんが…
ファンタジーという一言では片付けられない、重たいテーマが流れているなぁと感じました。
上橋菜穂子さんのあとがきに唸る
文庫版の外伝の最後に上橋菜穂子さんによるあとがきがありました。
タイトルは「人生の半ばを過ぎた人へ」(←私に言ってるようだ…)
この中のある文章に思わず唸ってしまいました。
『獣の奏者』は児童文学ではありません。
子どもでも大人でも読みたいと思った人が読んでくださればいいと思って、紡いできた物語ですから、内容にも表現にもなんの手加減も加えませんでした。引用元: 上橋菜穂子著:獣の奏者エリン 外伝 刹那 あとがき
一つ一つの描写がリアルなのです。
恋人同士の心の動きや営み、人と人との駆け引きとか仕方のなさとか、さまざまのことが、決して平易で無い言葉で語られていきます。
子ども向けとはいいがたいと思ったところが多々あり、ふと「これ、次女ちゃん意味分かったのかな」と思った部分がありました。
たぶん獣の奏者は、分類としては児童文学に属するでしょう。
異世界を描くファンタジーですし、大人が手にするよりも子供が手にする方がおそらく、多い。
でも、書き手としての上橋菜穂子さんは子供向けという意識は無く、表現上、手を抜くことを一切しない人なんですね。
理解できないところは省いたりやさしくしたりということはせずに書いていたんだなということがわかり、納得。
こういった、読者を甘く見ない、子供に対してもわかりやすさだけを求めない、という姿勢がすごくいいなと思いました。
多少難しかろうが、中学生の次女はその世代なりに本気で面白いと思い、何かに感動し、好きになって、私に猛烈に進めてきたんでしょうし。
一字一句、セリフを覚えてしまうまで読み込んだのだと思うんです。
大人の私とはまた、違った思いを抱きながら。
いつでも読み返せるし、きっとその時その時、感じ方が違う。そういう物語って本当に宝みたいなものだなぁと。
次女は上橋菜穂子さんの大ファンになり、なぜか「なほこさんの本ってホントに面白いんだよ!」と、下の名前で呼びます。
知り合いか?って感じですが。
精霊の守り人シリーズ、鹿の王、狐笛のかなた、どれを読んでもすごく良い、面白い、早く読んでママ!といってきます。
そんなに好きになれる作家に出会えたことも幸せだよねぇ。
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追伸:獣の奏者のエリン アニメの主題歌もよい
獣の奏者がとてもよかったので、今度は長女に「読んで」とすすめてみたら、「いや、わたしアニメで全部見ちゃったから…」と。
昔NHKのアニメワールドで放映されてたのを、パパと二人で見てたんですよね。
先にアニメ見ちゃうと、原作の主人公の顔とかのイメージが限定されちゃって楽しめないってのは確かにありますね^^。
すごく好きだったみたい。
アニメ版の獣の奏者エリンと、次女の原作版(?)の獣の奏者の話で二人で会話しても違和感なく、不思議な感じでした。
お互い見てるものは違うわけだけど、アニメ版も秀逸だったからか、イメージがうまいこと一致していたみたい。
丁寧に作られたアニメだったんですよね。わたしは家事をしながらだったのか、じっくり見てなかったみたいですが^^;
NHKのホームページを見て絵に記憶がありました。
そう言えば主題歌もよかったもの…。
歌が流れてきたときに「なに?すごくいい」と思ったのですけど、なんて曲だったか思い出せなくって。
さっきWikipediaで調べてみたら、スキマスイッチの「雫」でした。元ちとせが歌ってた記憶。
名曲だ…。
松たかこの「きっと伝えて」もうっすら覚えてます。
改めて見たいな。U-nextとか、huluで配信されないかな…。